仲邑兼継(なかむら かねつぐ)
仰木家の顧問弁護人
CV:茶介
SAMPLE VOICE 01
SAMPLE VOICE 02
キャラクター紹介
仰木家の顧問弁護人。
日本人離れした色素の薄い髪と目を持ち、周囲からは奇異の目で見られている。
外見や冷たい口調も相まって一見冷淡なように見える。
あらすじ
仲邑は仰木家の顧問弁護人として時折屋敷に訪れる客人だが、
冷たい物言いの彼を使用人である主人公は苦手に思っていた。
しかし、梅雨のとある夜を境に、違った印象を抱くようになる。
そしてそれは徐々に恋心へと移り変わっていくが……。

夢の夢こそ、あはれなれ―



※本作は二種類のエピローグトラックが収録されております。
お好きなエンディングを選んでお楽しみいただけます。
発売日
2018年10月26日(金)
定価
¥2,420円(税抜価格2,200円)
JAN
4520424255979
品番
HBGL-011
シナリオ
アザミ白秋
イラスト
一野
企画・ディレクション
志水
ジャンル
女性向けシチュエーションCD
(18歳以上推奨)
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特典情報
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ドラマCD SAMPLE
ドラマCD
アナザーエピローグIF『奈落の情交』
アナザーエピローグの後に起こったかも知れない、『もしも』の物語。
※Hシーン有
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ドラマCD SAMPLE
ドラマCD
ブロマイド
エピローグアフター『昼下がり、玄関にて』
※Hシーン有

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ドラマCD SAMPLE
ドラマCD
SSペーパー
エピローグアフター『夜分、寝所にて』
※Hシーン有
ショートストーリー

この手紙は、滞在先の宿の部屋で書いています。
今回の出張は以前の時よりも長いですね。早く貴方の元に帰りたいです。
こちらの天気は地雨が続き、何だか鬱陶しいです。東京の天気は如何でしょうか。秋も深まり肌寒くなってきたので、夜はちゃんと暖かくして寝て下さいね。
昨日は電話をしたので、今日は手紙を書きます。決まりが悪い気もしますが、貴方への想いを文字にしてみるのも良いかと思ったので。

先日、やっと結婚式を挙げることが出来ましたね。遅くなってごめんなさい。
真っ白なウェディングドレスを身に纏った貴方は、とても美しく愛らしかったです。恥ずかしがって中々顔を見せてくれなかったのも、抱きしめたくなる程可愛かったです。
貴方の夢を叶えることが出来て、漸く夫として一人前になれた気がします。
手紙を書きながら、いつも持ち歩いている写真を見ています。式の時、二人で記念に撮った物です。写真の中の貴方は、とても優しく微笑んでくれています。
貴方にも同じ写真を渡しましたよね。その中にいる俺を、今一度見てくれたら嬉しいです。

一緒になってからも、貴方に心配や迷惑を掛ける事が多々ありましたね。
以前二人で街を歩いていたら、子供達が俺に石を投げつけてきたのを覚えていますか。
そして異人だ異人だと騒ぐ子供達を、貴方が叱った時はとても驚きました。貴方が他人に声を上げたところなんて初めて見た気がします。
不謹慎かもしれませんが、俺の為に怒ってくれたのは気分が良かったです。けれど同時に、夫としても男としても申し訳なくなりました。

これから先も、辛い目や苦しい目に遭ってしまうだろうと思います。
しかしどんな目に遭っても、貴方さへ俺と一緒にいてくれれば、乗り越えられないことはないと思っています。これは大袈裟に言っているのでも何でもありません。本当にそう思っているのです。前からもそう思っていました。
この頃俺は、貴方がお菓子なら頭から食べてしまいたいぐらい可愛い気がします。嘘じゃありません。
どうか離れていても、俺が貴方を何よりも愛しているということを忘れないで下さい。
何だか長くなったので、これでやめます。暇があったら、手紙を書いて下さい。

十月二十六日 兼継

仰木家の庭はよく手入れがされている。仰木子爵のご母堂が生前大層大切にされていたそうで、それを守るように専任の庭師が数日おきに訪れては手入れをしている。屋敷の裏手にあるそこは季節の草花が広がり木々も見事に整えられていた。
歴史を思わせる大木の陰にひっそりと溶け込む東屋へ足を踏み入れ、頬を撫でる風を感じる。
木々や草花、自然が好きだ。
それらは己を高みに置いて他人を蔑んだり、貶めたりしない。静かに己の生にのみ真っ直ぐであろうとするその姿はとても眩しく映る。
自分が陰で鉄面皮と称されていることは知っている。草花を愛でる趣味があるというのは、周囲からすればきっと意外なのだろう。
けれどその中にあっては、他に誰もいなくとも不思議と孤独ではなかった。
群衆の中にいてこそ強く思い知らされる孤独から目を背けていられる時間は貴重だ。
ここのところずっと天候が不安定だったためこんなに爽やかな青空は久しぶりに見た気がする。東屋の柱に肩をもたれて目を閉じれば穏やかなひとときが訪れた。
少しの間そうしていると、ふと、遠くから自分の名が響く。
(あれは……)
少し前に彼女の前で失態を演じてしまったのだが、それから何くれとなく俺のことを気にかける、少々変わったひとだ。たおやかなようで意外にしっかりしており、かと思えば突拍子もないことを言い出したりと驚かされる。けれどその言動には決して無用な憐みや蔑みを含まない。
見やれば、何がそんなに嬉しいのか、にこにことこちらへ向かって手を振っていた。
「――まったく」
片手で桶と掃除用具を抱えてよろめきながら、随分と無理をしてをもう片方の手を空けているようだ。
(俺のことなど無視すればいいのに――……ああ、もう)
今にもずり落ちてひっくり返りそうな桶が心もとなくて、思わず駆け寄る。覚束ない手元から桶を取り上げた。
「遠慮する必要はありません。本日の業務は終了していますから、何をしようと私の自由です」
服が汚れてしまうことを懸念する彼女の遠慮を押し切れば、恐縮した様子で「それじゃあ……」と中庭の方向を示した。
「それでは参りましょうか」
何がそんなに嬉しいのか、彼女は大きく頷いて微笑む。
彼女は掃除用具を、俺が桶を持って並んで歩き出せばいつも通りの他愛のない会話が始まる。彼女はいつも様々な話を心底興味深そうに聞いている。
(若い女性が聞いていて楽しい話ではないだろうに……)
しかし、以前そう聞いたところ、彼女は自分の知らないことを知っている俺の話は楽しい、と言っていた。生来好奇心の強い質なのだろう。
「――そういえば、」
「……? どうかしましたか?」
しまった。思わず零れてしまった独り言を何でもありませんと慌てて飲み込む。
(――そういえば、彼女といると感じたことがないな)
他の誰といても持て余すあの孤独感は、彼女といる時にはついぞ顔を出したことが無い。不思議ではあるが――

(そんなに、悪い気分ではないな)